但野正和の「闘いはワンルームで」
第10回:老害まったなし
ふむ。完全に自らが招いたことなのだから、誰のせいにも出来ないのだが。
なんだかんだとウダウダと言い訳を述べ、誘っていただいたライブを断り続けた結果。5月に一本もライブが入ってないという事態になってしもうた。
ライブをしないと人はどうなってしまうのか。経験上、ドンドン人間が駄目になり、グングン根性が腐ってゆく。という研究結果が出ている。
SNS上に飛び交う、世のバンドマンどもの美しい感情のほとんどにアレルギーを起こし始め。
ライブ後にツイートする感謝のメッセージを発見しては、その全てをフェイクと決めつけるのだ。
否!
確かに、ライブをやっている時には理解できていたのだ。客席に満ちたポジティブなエネルギーはステージにまで蔓延。その効果により、私のハートもすっかりと穏やかであった。
ところがライブをやらない期間が続くと、そのエネルギーもすっかり失い。
元来大部分を占めていた悪党エネルギーが肥大化。ついには手のつけられない札付きのワルが出来上がる。
ああ、ライブがやりたいよう。このままではいつコンビニで買い物中の他人のビニール傘に手をつけてしまうか分かったものではない。
ああ、どうしよう。デビルマンになってしまう。
一度したリツイートを外しては何度も何度もリツイートし直し、皆様のタイムラインへひょっこりと顔を出そうと、健気に頑張っている行為を発見しては。「数稼ぎのためにみっともねえ真似してんな。誇りだけは失ったらおしめえだろうがクソが」と、パンツに隠していた凶器のフォークで襲いかかり。
己の作品をクドクドと解説する作詞家を目撃すれば。「聞かれて答えるならまだ格好もつくが、てめえで率先して言葉にするなど言語道断。音楽が泣いて呆れるわ。オシャベリクソ野郎が」と、口元を血で汚す。
質問箱なんてもんを見かけた日にゃあ。「ラジオにでも出てメールが送られてくるその日まで待てんのか。お利口さんに答えてんじゃねえぞこのアバズレヤリチンが」と、また拳を血で染める。
そして分かりきっているのは、全てにおいて私の心が圧倒的に腐っているということだ。その全てがブーメランとして私のみぞおちに深く刺さる。完全に分が悪く、しっかりとSNSにドップリ浸かっている私に、勝ち目など皆無である。まさに老害一直線。
いやしかし。何故私はそもそもこんな奴なのか。一体どこでどんな物体に触れればこんな根性の腐った男になるというのか。
正義感の強い父と母に育てられたにも関わらず。一体、どこで裏道に迷い込んだのだ私は。
可能性としては祖母だ。両親共働きの私は祖母っ子だったのだが、この祖母というのが外では良い顔をするくせに、自宅ソファでくつろいでる時なんかは、毒を吐きまくる悪女である。おそらく私はこの祖母の愛情をたっぷりに受け。影響もたっぷりに受けてしまったに違いない。次回帰省の際には要抗議だ。
と、祖母の悪口を書きたかった訳ではない。
私の人格形成の素を究明するために、過去を遡り、私をこうした原因となっているサムシングを明確に見つけて語りたかったのだ。
それが祖母だなんて。それは私のコラムの本意では無い。
本意では無い…のだが、ここに辿り着いてしまっては仕方ない。筆は生きている。いわばコックリさんに決められた運命と同位。変えられない宿命。どうやら今回の闘う男は「私の祖母」のようだ。
言っておくが、祖母について語れる美しい話など一つも無い。
家族をネタに美談を仕立て「嗚呼、但野さんて家族想いのステキな人ネ。お願い抱いて」っていうアレ。
無論その展開は非常に魅力的ではあるが。脳みその隅をどれだけ突こうが祖母のグッとくるエピソードが見つからない。かと言って腹を抱えて笑えるほどの腐れ外道なエピソードも見つからない。それでもほんの少し、語らせてほしい。
特筆すべき祖母の逸話はいくつもあれど。
(一日3度の衣装替えによるお洒落すぎ伝説や、踏み台昇降ストイックすぎ伝説などなど。)
一番に皆様にお伝えせねばならないのは、料理のセンスが個性的であるということ。
勝手なイメージではあるが、一般的に祖母の料理というものは何故だかホッコリとする。暖炉が暖める部屋で、ユラユラ揺れる椅子に腰掛け。懐かしくも柔らかなクラシックな品を味わう。まさに理由なきホッコリ。
ところが我が祖母は、そんな大衆主義を一蹴。
まずテレビやラジオで医者が話すことは全て信じ。アレが身体に良いと聞けばアレを買い。コレが良いと聞けばコレを買う。
そんなその時々でブレまくる材料を無理やり既存の料理にミクスチャーロックするものだから、世にも恐ろしい物体を錬金させる。
そしてその一番の新鮮な被害者は、私だ。
思い出しただけでも恐ろしい、栄光ある過去ナンバーワンの料理の話をしよう。
簡単に言ってしまえば、【自作ニンニク卵黄】である。
おそらく通販かなんかで見たんだろう。「ニンニク卵黄は身体に良いのです。おかげで毎日の疲れはとれ、肌ツヤは若返り、黄ばんだ歯も真っ白に、薄毛にも効きます」というようなやつだ。
ならばすんなりフリーダイヤルにテレフォンし、定期購買を申し込めばいいのだが。警戒心も人一倍強い祖母は、その既製品には悪いものが入ってると判断したんだろう。見様見真似で作ってしまったのである。
作り方は定かでは無いが、おそらく溶いた卵に結構な量のペースト状のニンニクをブチ込み。それを固めるためにお好み焼きのように平べったく焼くのである。
完成したソレは異様な臭いを放つセンベイなのだが、面積のほとんどが焼きすぎていて。黒ギャルはおろか、その姿はライクア松崎しげる。いや、焦げてるのか、そもそも祖母の理想の仕上がりが松崎なのか。私には判断しようがない。そしてその恐ろしいセンベイを私にたんまりと盛り付け。目を輝かせながらコッチを見るのである。
マヤ…恐ろしい子!
しかし私も人の子。大人しく従うわけもなく。だいたいの食べ物に対し、不味い!と反論するのが一連の流れというお約束なのだが、(無論、本気の気持ちだ)
せっかくなのでそこで必ず飛び出す祖母一の名言を残しておこう。
「美味しい物は身体に悪い。身体に良い物は美味しくないんだ。黙って食べなさい」
?????
いやいやいや!どういう道理!?同じ材料使うんだったら同じじゃないの!?美味しい方が良いじゃん!ホワイジャパニーズピーポー!
これまでに何度言っただろう。私の声は祖母に届かず空気に溶けた。
ダブルサイズベッドルーム。本日、解禁される情報がいくつかあり