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Rock is(ロックイズ)

4月29日 16:40頃

ARABAKI ROCK FEST.17 西馬音内盆踊り

引き続きHATAHATAにいると、近くで西馬音内盆踊りが始まった。重要無形民族文化財に指定された秋田の盆踊りである。こうやって東北の文化を身近に感じられるのもアラバキの魅力だ。風流ですねえ。

ステージへ戻ると04 Limited Sazabysが登場。近年すさまじい勢いでシーンを席巻するメロディックパンク旋風を初出演の舞台にお見舞いしていく。陽が傾き、照明が灯る。その光のグラデーションが、響き渡るエモーショナル成分にさらに火を点けるような感覚。自身で野外フェスを主催し、日本武道館公演も成功させた彼らを観に大勢のお客さんが集まっているけど、もっと集まってもおかしくないと思う。それほど、全身全霊をスパークさせる演奏と黄金のメロディが人々を「いいところ」へ連れていっていた。

ARABAKI ROCK FEST.17 04 Limited Sazabys

 

  • セットリスト
  • 01. swim
    02. monolith
    03. fiction
    04. Warp
    05. climb
    06. me?
    07. midnight cruising
    08. Horizon
    09. Terminal

 

次はiki orchestraのためにTSUGARUへ。Rei(Vo, Gt)、ちゃんMARI(Key)、日向秀和(Ba)、中村達也(Dr)という言わずと知れた手練れたちによる、完全初公開の特別セッションだ。お揃いのベレー帽を被った4人が位置につくと、中村達也の咆哮を合図にブルースセッションの口火が切られる。ものすごい息の合いよう。続いてReiの「My Mama」。もともと勢いのあるナンバーだけれど音源とはまるで別物。曲を生かすとはこのこと、というぐらいグルーヴが生き生きとしている。ライブは「Can’t Take My Eyes Off You」を始めとするスタンダードの数々を披露しながら進行。特に達也のシャープなキックとひなっちのピッキングのキレが抜群で、それはスローな展開でも同様だ。熟練指圧師のごとくピンポイントでツボを射抜いてくる。そんな鉄壁のリズムに乗り、ReiとちゃんMARIが時に向かい合いまるで蝶が舞うかのようにソロを絡め合う。泣く泣く中座したが、一度で終わらせるにはあまりに惜しい絶品饗宴であった。

ARABAKI ROCK FEST.17 iki orchestra

長い1日もいよいよ終盤。最後に観たのは、BAN-ETSUのトリを飾るLOVE PSYCHEDELICO SING BOB DYLANである。三日月の下にKUMI(Vo)、NAOKI(Gt)、深沼元昭(Gt)、高桑圭(Ba)、冨田政彦(Dr)、松本圭司(Key)がオンステージ。いきなり「Like A Rolling Stone」からスタートという贅沢すぎる幕開け。続く「Subterranean Homesick Blues」を含め、演奏陣が妙技を織り込みつつも基本的には原曲に忠実なアレンジをしている。それは「若い人たちにスタンダードなロックを聴いてもらいたい」という本フェスの意向に沿うものでもあるだろう。

豪華なゲスト陣によるパフォーマンスも素晴らしかった。ウクレレを持つキヨサク(MONGOL800)が「Mr. Tambourine Man」を歌えばあたたかい風が吹き、藤原さくらが「It’s All Over Now, Baby Blue」を囁けばブルー成分がじんわり滲む。「I Want You」から岡村美央(Vn)も加入、美旋律と時にスティール・ギターのような狂おしさを添えていく。「Rainy Day Women #12 & 35」を日本語でカバーした曽我部恵一。この曲はシンプルなブルースだ。だからこそ、まさに彼の歌った《石でぶたれる》という言葉のような力強いパワーを爆発させる演奏に心打たれた。

ARABAKI ROCK FEST.17 LOVE PSYCHEDELICO SING BOB DYLAN

ザ・ソウルマンといった出で立ちで登場したのはトータス松本(ウルフルズ)。身体をクネクネさせながらピッチもタイム感も自在、情感たっぷりと「Just Like A Woman」を歌い上げ、「Blowin’ In The Wind」でシンガロングを巻き起こす。再びすべてのゲストが登場し、急遽出演が決まったReiがiki orchestraから駆けつけ、さらにディランと言えばこの人、みうらじゅんもアコースティック・ギターを抱えてオンステージ。何もしていないのに笑いと歓声が押し寄せる。と、不意に「こんばんは、ボブ・ディランです」とご挨拶(笑)。僕は28歳なのだけど、正直ずっと「あの人ってテレビでよく観るけど結局何者なんだろう?」とよくわからなかった。でも初めてステージに立つ姿を観て、なんだか腑に落ちた。ただギターを下げて立っているだけで妙な説得力があったからだ。言うまでもなく、「Knockin’ on Heaven’s Door」のしゃがれたボーカルからも、途中で4弦を切ってもステージを降りるまでそのまま続けたことからも、それは感じた。

ラストは30周年記念公演のフィナーレと同じく「My Back Pages」を歌い手全員リレーにて。万感の大団円を飾る。この曲はこうとか説明めいたMCは一切なし。ただただボブ・ディランの曲を演る。ボブ・ディランはいないのに。それもこの極東の地で。それでも大観衆が湧きに湧く。その光景はとても不思議であり、とてもボブ・ディラン的であると言えるのかもしれない。大満足のうちに、そんなことを思った。

  • セットリスト
  • 01. Like A Rolling Stone
    02. Subterranean Homesick Blues
    03. Mr. Tambourine Man
    04. Positively Fourth Street
    05. It’s All Over Now, Baby Blue
    06. I Want You
    07. Rainy Day Women #12 & 35
    08. Hurricane
    09. Just Like A Woman
    10. Blowin’ In The Wind
    11. Knockin’ on Heaven’s Door
    12. My Back Pages

 

まだACIDMANらが演奏しているはずだけど、今からMICHINOKUへ向かっても少ししか観られないし、ということで初日はこれにて帰路へ。帰りのバスは20分ほど並び、約1時間かけて仙台市内に着く。しっかり休んで翌日に備えることにした。

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