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「太陽光でロックを!」中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017に行ってきた


2017年9月24日(日)大トリは仲井戸“CHABO”麗市SOLARJAM

クロマニヨンズが終わって人の波はリデンプションに移動する。東北ライブハウス大作戦ステージ。トップはkjバンド。THE HIGH-LOWSの「日曜日よりの使者」で始まりTHE BLUE HEARTSの「トレイン・トレイン」へ。クロマニヨンズのステージが終わった直後に、THE HIGH-LOWS、THE BLUE HEARTSと時間を遡っていく。kjなりのリスペクトが込められている。「太陽光ですべてが賄えるかわからないけど、やってみないとわからない。俺たちはソーラーブドウカンに賛同します」と宣言。「(東北ライブハウス大作戦ステージ出演バンドの中で)このバンドが一番練習してるからね」と言って観客を笑わせる。しかしこれは冗談ではなく、細美武士も「kjのバンドがトリでよかったんじゃないか」と話していた。「トレイン・トレイン」の切れのよさはなかなかのものだった。難波章浩が合流して「TAKE ME HOME,COUNTRY ROADS」を披露。次にTOSHI-LOWが登場。山口洋を招き入れ、RONZIと共に「満月の夕」を演奏。その後、エセタイマーズへとなだれ込む。今年、フジロックのアトミック・カフェでタイマーズのトリビュートを企画した。やがて言いたいことが言えない時代がやって来る予感がしたからだ。タイマーズは、RCサクセションのアルバム『カバーズ』を発売中止にされた経験から、忌野清志郎が言いたいことを言うために結成した覆面バンドだ。フジロックの2日目にはエセタイマーズに出演してもらった。まさかここでまたエセタイマーズに遭遇できるとは思わなかった。「タイマーズのテーマ」「Have You Ever Seen The Rain」「Summertime Blues」を披露。タイマーズと言いつつ『カバーズ』の曲が中心になるのはタイマーズ・トリビュートの「あるある」。フジロックでも結局そうなった。だけどそんなことはどうでもいい。マインドがタイマーズだったら、どんな曲をやろうとタイマーズだからだ。要するに言いたいことを自由に発言するという姿勢の問題なのだ。次に荒井岳史のユニットがオアシスのカバー「Don’t Look Back In Anger」を演奏。会場全体がシンガロング状態に。最後は細美武士のバンドが「ROCKSTEADY」「My Instant Song」を演奏。メンバーはベースにウエノコウジ、ギターにホリエアツシ、ドラムにナカヤマシンペイ。the HIATUSとストレイテナーの混合バンドだ。そこでタイムオーバーとなった。中津川ソーラーも東北ライブハウス大作戦も3.11が起点になっている。音楽ファンの中で3.11が風化しないのは、東北ライブハウス大作戦の力が大きい。継続することがいかに大事か。継続がどんなに大きな力になるのか。それを彼らは提示している。その精神は中津川ソーラーにも受け継がれている。薄皮を重ねていくことが一番の力なのだ。昨日までの非常識が今日になったら常識になっていたなんて例はいくらだってある。3.11を起点にした2つの「志」が出会った意味は大きい。

ヘッドライナーは仲井戸“CHABO”麗市SOLAR JAM。登場曲のRCサクセションの「よォーこそ」から「打破」へ。今夜のバンド・メンバーは湯川トーベン(b)、Dr.kyOn(key)、河村吉宏(dr)。河村吉宏は、CHABO BANDの河村“カースケ”智康のご子息。見事なドラミングに仲井戸麗市は「オヤジの時代は終わった」と言って観客を笑わせる。佐藤タイジが呼ばれてRCの「スローバラード」を熱唱。つづいて仲井戸麗市がブルース・スプリングスティーンの日本語カバー「ハングリー・ハート」を披露。TOSHI-LOWが登場して「忌野清志郎の手紙“地震のあとには戦争がやってくる”」を読んでRC『カバーズ』収録曲「明日なき世界」を歌った。佐藤タイジの「スローバラード」、仲井戸麗市の「ハングリー・ハート」、TOSHI-LOWの「明日なき世界」。この3曲はそれぞれカバーだが、もはやそれぞれの歌になっている。とくにTOSHI-LOWの「明日なき世界」はいつ聴いても心に迫るものがある。ビートルズがカバー曲を自分たちの曲として昇華したように、それぞれの歌になってこそ、カバー曲は生命を宿すのだと思った。そこには「歌い継ぐ」という意味もある。と思っていたら、「俺が高1の時に見たビートルズ日本公演の1曲目をやります」と言って「ロックンロール・ミュージック」を仲井戸麗市の日本語詞で演奏。ビートルズがカバーしたチャック・ベリーの曲を仲井戸麗市がカバーするという、名曲を歌い継ぐことの面白さや意味深さを示してくれた。そしてステージはクライマックスへ。「今日は清志郎くんも来ていると思う」というMCにつづいて演奏されたのが「雨あがりの夜空に」。仲井戸麗市はRCサクセションの名曲をセルフカバーして7インチレコードでリリースした。それが何を意味しているのかは明白だ。RCを歌い継ぐという、仲井戸麗市の意思と決意のあらわれだ。だから、この「雨あがりの夜空に」はただのカバーじゃない。楽屋に残っていたミュージシャン全員がステージに登場し、中津川ソーラーは大団円を迎えた。最後にDr.kyOnと仲井戸麗市が残り、「ガルシアの風」のリーディングを始めた。仲井戸麗市の言葉が闇を包む。それは中津川ソーラーへ贈るメッセージのようでもあった。「どうにもならぬことなど何もなかったのです/どうにもならぬことなど何ひとつなかったのです」。中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017はこうやって幕を閉じた。(森内淳/DONUT)

photo by 三浦麻旅子/岡村直昭

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