最終少女ひかさ、北の大地のように大きな渦とロックンロールを生んだ初ワンマン
朝、東京を出発し余裕をもってCOLONYに到着すると、予定の入り時間よりもずいぶん早くにメンバーが集まってきた。やはり初ワンマンに向けて気が逸るのだろうか。あわててカメラを取り出して撮影を開始。しばらくして各自準備を進めていると、ファン有志からフラッグと寄せ書き、メッセージなどが続々と到着。全国のひかさタローの思いがCOLONYに集結してきた。喜びと同時に、メンバーの表情も引き締まる。念入りにスタッフと相談しながらサウンドチェックとリハを無事に終えると、楽屋には緊張の波が押したり引いたり。あとは本番を迎えるのみ。
開場の18時にあわせ、COLONYのスクリーンにはメンバー総出演のオープニング映像が映し出された。スタートまでお客さんを楽しませようという心遣いがなんとも彼ららしい。30分強に及ぶ映像からフロアが暗転、影ナレを務めたラモネスの場内アナウンスが終わるとブザーが鳴り、いよいよワンマンライブの幕開けへ。<開戦!>という歌い出しが初ワンマンを勢いづける1曲め「B」から、ステージへ立つ覚悟を綴った「商業音楽」と、まるで宣戦布告のようなナンバーの連打でスタート。「ワンマンだからってぬるいライブはやらない」と但野が吠える。軽快なビートが走る新曲の披露も早々にあり、新たな顔を覗かせるサマに逞しさがみえる。そしてその逞しさは、予想外に起こったハプニングでさらに顕著なものに。7曲めが終わったところで小野寺のベースの音が出なくなってしまったのだが、しばしMCでつなぐも復帰に時間がかかると踏んだ但野は急きょ、弾き語りで1曲披露。ハプニングを味方につける形で、ファンにとっては思いがけないプレゼントとなった。初ワンマンにしてこんな事態が起こるとは、もはや“もってる”としか言いようがない。
そこからの5人のテンションは凄まじかった。近くのスタジオからベースを借りて(その後に本人のベースも復活)再開したのがいきなりの「ラブソング」という展開も驚いたが、この日2曲めの新曲「レイラ」で聴かせたジャジーなロックンロールはまさしく新機軸。ムーディーなベースラインも印象的な、音源になったら大きな反響を呼びそうなナンバーだ。そんな新しい風を吹かせながら、ワンマンならではのセットリストでステージが進む。ハードからポップまで、メロディもリフも全身で弾きまくる山田。美しくもパワフルなプレイで、ひかさの音色をモノクロにも極彩色にも彩るラモネス。ときにしなやかに、ときに雷神のようにビートを叩き出すイワノ。どっしりと渦巻くグルーヴに、強さも艶ものせる小野寺。そして、自身からあふれ出る言の葉をひたすらまっすぐにフロアに届ける但野。言葉にならない想いも歌にのせながら、そしてその歌がオーディエンスの心をつかむ風景を何度も見せながら、1曲ずつ最終少女ひかさの足取りを刻んでいく。本編後半、バンドの結成話に続きうたわれた「豊平川」では、この5人で辿り着いた今日という日を噛み締めながらステージに立っていることが、メンバーの音から表情から伝わって来て胸を打つ。本編ラストは「あーりんわっしょい(いぎありわっしょい)」。オーディエンスの大合唱は、この歌が“みんなの歌”になっていることを表している。ステージから放たれたカラフルな風船たちが、ここにいる全員の愛と「ありがとう」と一緒にCOLONYに優しく舞っていた。
フロアの声援に応え登場したアンコールで但野はこう言った。「もう俺たちの音楽が誰にも必要とされていないなんて言えない」。やっと気づいたのか。もうとっくにひかさの音楽は、私たちの心に寄り添っている。ドラマチックなステージと、真摯でチャーミングな人間性。その両方からあふれる熱い想いとサウンドは、北の大地のように大きな渦とロックンロールを生んでいた。(秋元美乃/DONUT)
2016年5月14日 最終少女ひかさ 1stアルバム『グッドバイ』レコ発ワンマン
「GEKOKUJO!」@札幌COLONY
セットリスト
- 1.B
- 2.商業音楽
- 3.まりこさん
- 4.人生
- 5.ローリングロンリーレビュー
- 6.媚びを売れ
- 7.すし喰いたい
(壊れそうだった——但野弾き語り) - 8.ラブソング
- 9.レイラ
- 10.かつき
- 11.TKB8
- 12.ハローアゲイン
- 13.関係者でてこい
- 14.さよならDNA
- 15.豊平川
- 16.あーりんわっしょい
- en
- 17.ロリータ
- 18.ピカピカ