Drop’sが新作『organ』を携えて開催したワンマンライブ、新代田FEVER公演をレポート
新作で新しい可能性の扉を開いたDrop’sが繰り広げた、ハッピーでエモーショナルなステージ
今年はバンド結成10周年を記念した企画ライブもスタート
12月21日、Drop’sが新代田FEVERにてワンマンライブ「冬の日のオルガン」を行った。これまでよりキャパシティの広い会場を見事ソールドアウトさせて迎えたこの日は、約2年半ぶりのスタジオレコーディング作となったミニ・アルバム『organ』のリリース日。FEVERの入り口に、今作のジャケットにも使用されたアンティークなオルガンが飾られていたことも特別感をアップしており、場内には久々のワンマンライブを待ちわびたファンのお祝いムードが開演前からあふれていた。
ステージに登場した4人が最初の合図を交わすと、『organ』にも収録されている楽曲「Cookie」でライブはスタート。まるで彼女たちの心境を映し出したかのような、跳ねるビートとリズムが転がりだす。幕開けにぴったりのナンバーだ。彼女たちの心境、というのも、今作の完成に至るまでのここ2年、Drop’sは度重なる転換期を迎えてきた。2017年にオリジナル・メンバーの奥山レイカ(dr)が脱退。その後、中野ミホ(vo>)、荒谷朋美(gt)、小田満美子(ba)の3人は地元・札幌から上京。その年の春に新メンバー石川ミナ子(dr)が加入。そして学業に専念するため札幌に残っていた石橋わか乃(Key)が2018年春に脱退。たった2年の間に、ともに音楽を鳴らす仲間と、音楽に向かう環境との両方に起こった変化は、バンドをその都度、新しい季節へと導いてきた。そしてようやく現体制での基軸が整い、作品作りに向かうことができた。このリリースパーティを待ちわびたのはメンバーもファンもきっと同じで、その喜びがステージにもフロアにも蔓延していたように思う。「かもめのBaby」「マイ・ロックスター」と一気に高まったグルーヴに続き披露された「こわして」では、荒谷のソリッドなリフ、小田と石川の重たいビートが絡まり、Drop’sサウンドのヘビーな顔を表出。歪みをバネにした中野の歌声も聴きどころだが、早々に大きな山場をみせたのが「ためいき」「ムーンライト」「ふたりの冬」のバラード&ミドル3連打。とくに「ふたりの冬」で聴かせる“歌”の存在感は特筆すべきもので、中野の歌声だけでなく、歌っているかのように奏でられる楽器の音色に何度も耳を奪われた。澄んだ空気、ひんやりした呼吸、白い夜明け。4人が描く冬景色が降ってくる。声と音が生むこの一体感は、新生Drop’sの大きな強みだろう。そしてこの日、一番の新風を吹かせたのが新曲「Cinderella」。「新しい歌をやります」という言葉に続いて鳴らされたこの曲はアルバム『organ』の冒頭を飾るナンバーで、作曲家・多保孝一との共作曲。Drop’sの真骨頂といえるロックサウンドというよりも、多彩なアレンジを施したポップナンバーとして仕上がった曲の佇まいに驚いたファンも多かったことだろう。同期を入れての演奏、時流を取り入れたサウンドメイクは彼女たちの趣とは一見、正反対のように思えるし、最初はライブでの鳴り方が想像できなかった。しかし、「もっとたくさんの人に聴いてほしい。もっといろいろなことに挑戦したい」というバンドの思いがこれまでのDrop’sという既成概念を自ら超えてみせた。もともとバンドが持っていたポップの種にアレンジという肥料が蒔かれ、芽吹いた“新しい歌”。フロアから大きな拍手が沸き起こった。ファンファーレのごとく確かな狼煙があがった瞬間だった。そして、ここに生まれた高揚感は次曲「未来」へ。<探しても 探しても 見つからない 未来のわたしよ>と、もどかしさや不安を感じながらも予感を胸にスニーカーで走っていく「Cinderella」から、<ねえ どこかに 未来 あるだろう>と、希望をこめる「未来」。“未来”が繋ぐこの流れで、中野のボーカルが爆発。荒谷が爪弾く旋律も、小田が強めるグルーヴも、石川が押し上げるリズムも、四位一体となって聴き手の胸を揺さぶってきた。これほどエモーショナルでソウルフルな「未来」は初めて聴いた気がする。今作『organ』について「出したくてウズウズしていました。この2年の間も、いろいろやっていたんだということをアピールしたいアルバムです。ひと言で言うなら“聴いてくれ”!」と語っていたが、新旧ナンバーを貫くバンドの音楽欲求がひときわあふれ出た熱演に、たまらずグッときた。
途中、CM曲「冬のごほうび」に続き、Drop’sからみんなへのごほうびということで「クリスマス・イブ」をカバーするなど、この日だけの選曲を挟みライブは終盤へ。2019年春には結成10周年を迎えることに触れると「初心を忘れずに頑張りたい(荒谷)」、「10年の絆に負けないよう、後ろから押していきます(石川)」、「みんなに感謝しつつ、自分たちのために突っ走りたい(中野)」、「まだまだこれからです。ついて来てください(小田)」と、意気込みを語る場面も。冬の匂いを漂わせる「十二月」や、タフなバンドサウンドに成長した「コール・ミー」、Drop’sの新章を彩る代表曲「新しい季節」でオーラスを迎えると、歓声に応えてのアンコールでは未発表曲「アイラブユー」を披露。札幌に原風景を抱きながら様々な景色を辿り、いま、この4人でこの場所に立っている覚悟、そして挑戦する心意気にあふれるステージをみせてくれた一夜。変化にも進化にも堂々と立ち向かい、自分たちの選んだ道を信じて笑顔で進む姿にDrop’sの強さと美しさがあった。
今春、バンド結成10周年を迎えるDrop’sは、自主企画対バンライブ”Drop’s 10th Anniversary「Sweet & Muddycheeks」”をスタートさせる。また、様々な思いや軌跡を重ね、バンドをやることに貪欲に向き合った結果、3月には『organ』とは姉妹作品となるであろう次作ミニ・アルバム『trumpet』のリリースが早くも決定している。新しい可能性の扉を開け、FEVERのステージに終始渦巻いていたハッピーでエモーショナルな空気は、10周年のアニバーサリーに向けさらに濃密になっていくに違いない。いまのDrop’sはそんな眩い予感に満ちている。(秋元美乃/DONUT)
- 2018年12月21日 新代田FEVER
<セットリスト>
- 1. Cookie
2. かもめのBaby
3. マイ・ ロックスター
4. こわして
5. ためいき
6. ムーンライト
7. ふたりの冬
8. Cindarella
9. 未来
10. SWEET JOURNEY BLUES
11. さらば青春
12. 冬のごほうび
13. クリスマス・イブ
14. 十二月
15. 星の恋人
16. 空はニューデイズ
17. コール・ミー
18. 新しい季節
EN
19. アイラブユー