FUJI ROCK FESTIVAL ’17 3日間のリポート
7月30日(日)
例年、木曜日の朝に入って、会場を後にするのが月曜日の午後遅く。今年は仕事の都合上、5日間もとるわけには行かず、金曜日の朝入って日曜日の深夜に帰るという行程だった。なので、今年はあっという間のフジロックだった。
最終日も店番からスタートし、夕方のアトミック・カフェ@GypsyAvalonから本格的に始動した。今日はトークに津田大介、佐藤タイジ、坂口恭平が登場。坂口恭平の暴走気味のトークに圧倒されたが、要所で津田大介が手綱を引いて、何とか丸く収まった。いつもは饒舌の佐藤タイジもタジタジだった。ライブは松崎ナオ&佐藤タイジ。彼らは、タイマーズのカバーはなく、RCの『カバーズ』から1曲「明日なき世界」を披露した。その後、松崎ナオと佐藤タイジがそれぞれのステージを展開。佐藤タイジは岐阜県中津川市で行う太陽光だけの フェス「ソーラー武道館」の主催者だ。彼は「太陽光だけでフェスを俺がやれるんだから、国が自然エネルギーにシフトできないはずがない」「それをやろうと国のリーダーが言わないだけ」と叫んでいた。全くその通りだと思う。その思いをこめて、松崎ナオと佐藤タイジでシアターブルックのナンバー「もう一度世界を変えるのさ」を歌った。このオリジナル曲にもタイマーズのソウルは宿っていた。この3日間は、トークの出演者は自分の視線で社会問題について語っていた。背伸びをせず、自分の知識の範囲で、自分の体験をもとにした話ばかりだった。3.11から時間が経ち、オリンピックという魔法の言葉でいろんな現実に蓋をされようとしている昨今、フジロックの場から発信できることを発信し続けることにますます大きな意味を感じた。
グリーンステージに移動し、ロードを見る。今年のフジロックで一番見たかったアーティストだ。彼女はニュージーランド出身のシンガーソングライター。16歳で世界的にブレイク。2014年には17歳でレッドマーキーに登場し、素晴らしいパフォーマンスを披露した。今回はグリーンステージのヘッドライナー前に抜擢。20歳になった歌姫はグリーンで歌えることを目一杯喜んでいた。今回のステージもドラムと2台のキーボードを従えて、ポップ・ワールドを展開する。ドレスにアディダスのスニーカーという衣装を身にまとい、躍動感に溢れるパフォーマンスを披露。ステージの最後に、新作の表題曲「グリーンライト」を披露。ちょっとベタすぎる印象もあったが、彼女のパフォーマンスが加わると至極のダンスチューンへと昇華した。最も旬なアーティストの、そのキャリアの中でも一番輝いている時期のライブを体験できるのは本当に貴重だ。眩しいほどのステージをそのまま楽しむほど、至極の体験はない。
ストライプスに後ろ髪を引かれつつ、我慢のビョーク待ち。フェスは見たいものが平気で重なる。ドミコのさかしたひかるが「今週のヘビロテ」でサンファを紹介したのは記憶に新しい。ところがフジロックではそのサンファとドミコが同じ時間にパフォーマンスをやった。フェスは楽しいが残酷な一面もある。欲望と欲望の闘いの場でもあるのだ。というわけで、待つこと1時間。ビョーク降臨。もはやビョークは別格。神の領域だ。そもそもビョークのパフォーマンスは祭祀に近い。自然や生き物に対する畏敬の念が音楽に、パフォーマンスに宿っている。ビョークは、さながら、その精霊たちの声を伝える巫女のようだ。ステージに現れたビョークはピンク色の衣装に、顔には薄い白い布か紙で作られたマスクをつけている。その佇まいは巫女そのものだ。太古の人たちは巫女のまわりに集まり、その声を聞いた。巫女は自然の神の声を伝え、時には舞った。エンタテインメントの原初的な光景をビョークはフジロックのステージで現代語に解釈して披露しているかのようだった。バンドは、たくさんのストリングスとDJという編成。この編成がビョークの歌声をより引き立て、その声は苗場の空気を震わせながら、客席へと降り注いだ。ステージは、映像はもちろん、花火も曲にリンクしていて、客席は高揚する一方。前回は大勢のダンサーと創作ダンスをやることで、地球の鼓動を表現したビョーク。今回はビョークひとりが語り部となり、物語を紡いでいた。完璧なビョークのワンマン・ショウだった。
というわけで、今年のフジロックは終了。2018年は7月27日(金)・28日(土)・29日(日)新潟県苗場スキー場での開催だ。今年行けなかった人も行った人もぜひ。