カスタムIEMをオーダーした後、待つこと4週間。いよいよオーダーメイドのイヤホンが完成。
カナルワークスの林社長から直々に贈呈式が行われた。ワクワクしながらこの日を待っていたカタヤマヒロキ。林社長から贈呈してもらった後、さっそく装着。フィット感はもちろん遮へい感もバツグン。外の音をシャットアウトし、サウンドに集中できる。さっそく自分の携帯プレイヤーにつないでDroogの曲を再生。曰く「まるでレコーディングスタジオで聴いているよう」。携帯プレイヤーやスマホでは聴きとりずらい細部の音やアレンジまで、手に取るようにわかるという。アウトプットの性能が上がることで、音の再現力は大きく変わる。カタヤマヒロキの感嘆はそれを物語っていた。聴き終えた後、カスタムIEMについて林社長にくわしく話を訊いた。
――1ヵ月かけて、カスタムIEMができました。
カタヤマ:できましたね。耳に入れるのがもったいないぐらい、いいイヤホンができたと思います。
――フィット感はやっぱり半端ないですか?
カタヤマ:いや、半端ないです(笑)。ぴったりです。僕以外の人には誰にもはまらないイヤホンですもんね。
林:そうですね。
カタヤマ:周りの声が聞こえないくらいフィットします。
――音を聴いてみて、どうでしたか?
カタヤマ:Droogの曲を聴いてみたんですけど。レコーディングの時、やっぱり、すごく大きなスピーカーで聴きながら作るじゃないですか。ちっちゃい細かいとこまでこだわって作っていて。で、レコーディングの作業の中で大切な事は必ず家のスピーカーで聴くことなんですよ。なぜかというと、スタジオの大きいスピーカーだと、やっぱり聴こえすぎて凄くいいんで、家のスピーカーでも聴いてみて聴き比べるのが重要なんす。ところが、今回、このイヤホンで聴いてみたらスタジオで聴くような、そんな立体感のある音でした。リスナーの方がこのイヤホンを使ってくれれば、ミュージシャンのこだわりが凄くわかりやすくなると思います。普通のイヤホンじゃなかなかわからないところ、家のスピーカーだとわからないところ、っていうのが凄くわかりやすくなるような気がしますね。より作り手と近い気持ちで聴いて頂けるかなと思います。
――イヤホンが違ってくると、そんなに音の表情が違うんですね。
林:違いますね。
カタヤマ:まわりもみんな普通のイヤホンを使ってるんで、普段そればっかり聴いてるんでわかんないじゃないですか。でもレコーディングの時に、良いイヤホンだったり、良いスピーカーで音をバンって聴くと「ああやっぱり違うんだ」って気付いて、みんな、いいものを欲しがったりしますね。ただバンドマンって金ないんで(笑)。
――今回のカスタムIEMはステージモニターという側面もありますよね。
林:そうですね。今回、お作りしたのはあくまでもステージ用で、もちろん音楽も楽しめますけれども、プロのミュージシャンがステージで使うのにベストなような音になっているんです。何が違ってくるかというと、ステージで気持ち良く耳に音が入ってきて、気持ち良く歌えたら、やっぱりノリも違ってきますよね。そういったところがひとつ大事になるのと、やっぱり会場の音が混じってくると、とくに大きい会場なんかは音が遅れてきますよね。
カタヤマ:はい。
林:それでリズムが取りにくかったりするんですけれども。それがきちんと自分の耳に適正な音量で入ってくるところが重要なんですよね。
カタヤマ:そうですね。
林:それから音量が大きくなったりするじゃないですか。例えば後ろにドラムがいるとかね。
カタヤマ:はいはい。
林:そういう音に常時さらされていると、やっぱり耳に良くないんですよね。そういう意味でも、遮音が取れてて、外の音が聞こえなくて、自分の必要とするモニターの音だけが聞こえてくる、っていう環境は大事なんです。耳の健康の上でも大事なんです。
カタヤマ:僕もかなりそうなっている方だと思うんです。あれだけの爆音の中に毎週いるわけですから。
――Droogは爆音ですからね。
カタヤマ:イヤモニをつけた方が耳にも良い、っていうことですね。
林:そうですね。適正な音量でモニタリングできるということです。それは耳にとても良いことなんです。
――イヤモニ=大会場というイメージがありますが、ライブハウスでも違う効力を発揮するわけですね。
カタヤマ:イヤモニはむしろ耳に良いんですね。長くバンドを続けるんだったら、使うしかないですね。長い目で見て必要ですよね。大きいステージにいってこれをつけようと思ってたんですけど、ライブハウスでもつけてみようかな、っていう気になりました。歌が上手くなりそうですね(笑)。同期の曲で、ドラムの人が使っているのはよく見ますけどね。
――今回のカスタムIEMは、ステージで気持ち良く歌えるように設計されたっていうことなんですけれども、音楽を聴くイヤホンとしてはどういう特徴をもっていますか。
林:今回お作りしたのはCW-L32vというモデルです。このモデルはステージで使う時には、ボーカリストの方が使ってもらうと凄く良いですし、一般の方が、あるいはカタヤマさんがオフの時に音楽を聴く用途で使ってもらう時には、ボーカルものは凄く楽しく聴けますね。
カタヤマ:なるほど。
林:例えば、好きなアイドルの子が耳元で囁いてくれるぐらいの臨場感は再現できますね。
カタヤマ:おー(笑)。
林:カタヤマさんのファンがこれで聴いたらね、もう堪らないですよ。
カタヤマ:僕が耳元で囁くような?
林:そうそうそう。
――イヤホンによってそれぞれ特徴が違うんですね。
林:うちのモデルは10数モデルあるんですけれども、例えば、Jポップとかボーカルものに向いているものとか、あるいはロックに向いているもの、ジャズに向いているもの、クラシックに向いているものというふうに、ジャンルに合わせていろんなチューニングを施してあります。自分の好みに合ったモデルが必ずその中にあるんじゃないかな、と思います。
――最初からたくさんのモデルがあったんですか?
林:最初に会社を始めた時は、いきなり10何モデルって作れないものですから、最初は1モデルだけですね。どなたが聴いても楽しく聴けるというモデルを用意しました。そこからチューニングの幅を増やしていきました。最終的には、ひとりのお客さんのために作っていますので、ひとりのお客さんに対して作るということは、直接感想を聞けるんです。その中で、「今度、こういうのがあると嬉しい」という意見もあるんです。「もっと低音を響かせてほしい」とか。「じゃちょっと作ってみましょうか」となるわけです。何か言ってもらえると、できる限りのことは応えたいと思うんです。技術者なので(笑)。それで徐々に種類が増えていったわけです。
カタヤマ:今回のロゴもそうですよね。
林:はい、それに加えCW-L52、CW-L52PSTS、CW-L33LV、スウェットガードProという新商品があって、ホワイトアッシュ、スプルース、メイプル、チェリー、ウエンジ、マホガニー、クスノキ、ウォルナット、ゼブラウッド、ローズウッドから選べるウッドプレート、ゴールド、シルバー、ピンキッシュゴールド、ブラックから選べるカスタムエンブレムが新しいカスタマイズオプションです。今回のDroogのロゴも新しい試みだったわけです。今回初めてやりました。今月末からオプションをご用意していこうと思って、その第1号がカタヤマさん。
カタヤマ:ありがとうございます!
――オーダーメイドのイヤホンはいつ頃、日本に登場したんですか?
林:「多分、俺がイヤモニを使った初めての日本人だと思うよ」って言っていたのは、LOUDNESSのボーカルの二井原実さんですね。彼もうちのを使って頂いています。2000年前後くらいからあったんですけど、元々はアメリカからの発信のものなんですよね。私が会社始めたのが2010年からで、当時は、個人で耳型を取ってくれるところを探して、海外に直接、英語でオーダーを入れてという手間のかかることをやっていました。一般のオーディオファンの人が英語でやりとりしてイヤモニを入手するのは至難の技だったと思います。
――それを林社長が日本で耳型採取からオーダーまでできるように整備したんですか?
林:そうですね、特に耳型採取では東京、関東地方、あるいは大阪、九州にそういうお店を用意するために、あちこちお願いに回って、協力してくださる会社を探しましたが、結構苦労しましたね。
――技術的な開発で苦労されたところはありますか?
林:私は元々パイオニアのエンジニアだったんですけども、カスタムメイドのイヤホンの技術は持ち合わせてはなかったんですよ。たまたま先輩でね、そういう補聴器の技術に詳しい人がいたんですが、そういう人から教わったり、補聴器メーカーさんに部分的に作ってもらったり、お願いをしたり、そういうお付き合いの中でこういう技術っていうのを育んでいったんです。カタヤマさんは耳型を取った時に、びっくりしませんでした?
カタヤマ:びっくりしました。冷たくて気持ちいいっていう(笑)。
林:音が全く聞こえなくなっちゃう。
カタヤマ:海の中にいるみたいな感覚でした。
――一般に普及し始めたのはいつ頃ですか?
林:普通のお客さんが使い始めたのはここ何年かのところですね。特にここ1、2年で女性の方もイヤホンを自分用に作られたりすることが多くなってきていますよね。
――いくらくらいから作れるんですか?
林:うちの一番安い製品で税抜きで5万3千円(税別)ですね。耳型が5千円前後。これくらいから作れますね。イヤホンも市販のいい製品は4、5万円しますので。その中のひとつの選択肢としてオーダーメイドで型を取って作るっていうのも、試してみると面白いと思うんですよね。
――高い製品になるとどこが違ってくるんですか?
林:一番廉価のモデルの中にはドライバー(スピーカー)がひとつ入ってるんですけれども、今回、カタヤマさんに作った製品には4つ入ってるんです。
――ドライバーが増えるメリットはなんですか?
林:ドライバーが複数入っていると、例えば、低音のために音を鳴らすスピーカー、中音だけのために鳴らすスピーカーがあったとして、シンバルの音はこっちのスピーカーで鳴らそうとか、バスドラムの音はこっちのスピーカー、ユニットで鳴らそうという風に調整ができるんですよね。音楽ジャンルに合わせて、お客さんの好みに合わせて、その組み合わせっていうか、音の作り方を無限大にできるんです。カタヤマさんに作った製品にはそれが4つ入っています。左右合わせて8つですね。
カタヤマ:8つ!
―― 一番凄い製品で、最大いくつのスピーカー入ってるんですか?
林:片側に8個入ってますね。多けりゃいいってものでもないんですけれども、スピーカーのユニットの組み合わせでこういう音にしたいっていう目的を達成するときに、ニュアンスを作りやすいんですよね。
カタヤマ:そういう話を聞くと、また聴こえ方が変わってきそうです。
林:そうやって聴きだすと、「じゃ他のイヤホンってどんな音になるんだ?」って、だんだん気になってくるんですよ。そうすると、週末ごとに秋葉原のお店あたりに行って、色々聴いてみると、「あ、こっちも良いなあ」ってことになって。で、やっぱりひとりで3つも4つも作る人もいるんですよね。クラシックを聴く時はこっちで聴くけれども、フュージョンを聴く時にはこっちで聴くとかね。
カタヤマ:今回、透明色をチョイスしたのもイヤホンの中が見えるからなんですよ。
林:やっぱり中がどうなってるのか見たいですよね。
カタヤマ:そうなんですよ。
林:「どうやったらこんな音が出てくるんだろう?」って。だから、ご注文されるお客さんでクリア系のシェルを選ばれる方は多いですね。友達に「ほら、凄いでしょ、この中にスピーカーがいくつ入ってるんだよ」という話ができますからね。うちのイヤホンはとくに中が綺麗に見えるように、ひじょうに透明度の高い作り方をしています。
カタヤマ:そうなんですね。
林:透明でもいくつかバリエーションがあります。カタヤマさんのために作ったものはガラスっていう、ちょっと緑がかったクリアです。同じ透明でも青味がかったアクアマリンもあります。透明だけでも5色あります。中は見たいけど、ちょっとオシャレもしたい、という風に楽しめるようになっています。
―― 中身も凝っているし、外観も凝っているという。しかもオーダーメイドで作れるのであれば、決して高い買い物ではないですよね。
林:例えば、靴とか服と、オーダーメイドで作るじゃないですか。そういうのと同じようにイヤホンにも、既成の商品とオーダーメイドの商品があるっていうことをまず知っていただけたらいいな、っていう。
カタヤマ:僕もオーダーでイヤホンが作れるとは知らなかったですね。やっぱりまだ知らないっていう人が多いと思うんで、僕もどんどんいろんな人にこのイヤホンを自慢していきたいですね。伝えるがてら、自慢していきたいです。
林:誰もが作るということにはならないと思いますが、よりこだわって作られているものが提供されてるんだよ、っていうことは伝えていきたいなって思っています。
カタヤマ:これから、いろんなミュージシャンの友達に伝えていけたらなと思います。ぼくがパーソナリティをやっているラジオでもちょっと喋らせてもらったんですけど。こういうのがあるんだよ、っていう、オーダーで作れるんだよっていうのを広めていけたらなと、自慢しながら、広げていけたらと思います。
林:よろしくお願いします(笑)。
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3.イヤホン完成!カナルワークスの林社長とカタヤマヒロキによる対談
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