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2018/12/19

森内淳の2018年10月 ライブ日記

 

10月1日(月)ザ・ビートルズ『ホワイト・アルバム』試聴会 ビクター・スタジオ

故ジョージ・マーティンの息子、ジャイルズ・マーティンを迎え、ビクター・スタジオで『ホワイト・アルバム』の試聴会が行われた。今、これを書いている時点ではすでに作品はリリースされた後。楽器の音がはっきりと聴こえ、広がりのあるミックスにけっこうハマっている。この手のものはいつも賛否両論。ぼくのまわりでいうと、最近の音楽に触れている人がこのステレオ・ミックスを称賛している。例えば若いバンドのプロデュースをやっている浅田信一くん。彼もこのミックスにハマっていた。昔のレコードばかり聴いている人ほどピンと来ていないような気がする。ジャイルズも最近のアーティストとプロデュース・ワークを頻繁に行っている。つまりそういうミックスなのだと思う。

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10月3日(水)ドミコほか 渋谷WWW

ドミコ主催のイベント。この日の模様はライブレポートに書いたので、そちらを読んでほしい。本当にいいライブだった。たぶん来年はもっともっとブレイクすると思う。Waikingsなんか正反対の佇まいだけど、同じ匂いを持っているから、ドミコにつづいてほしいと思う。

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10月7日(日)エルモア・スコッティーズほか Yokohama B.B.street

横浜BBストリートで若者たちの手作りイベント。エルモア・スコッティーズ、ヤナセジロウ(betcover!!)、ハイエナカーという、DONUTやRock isで推しているアーティストが登場。今日はたくさんバンドが出たけど、この3組は頭ひとつ抜けていた。その差はやはり歌の表現力、歌の表情だろう。エルモア・スコッティーズはロクローのボーカルの圧がクールな佇まいの楽曲を押し上げている。ヤナセジロウのパフォーマンスは文句なし。バンドもいいが、バンドでしか表現できないようなことをきっちりアコギ1本でも伝える表現力を持っている。今の音楽業界のなかでもズバ抜けた存在。ハイエナカーは佐野元春なんかが切り開いてきた「都市のロック」を若い視点で体現できる貴重なアーティスト。今日も真っ直ぐにロックンロールを放っていた。

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10月12日(金)Rock is LIVE5  Basement Bar

下北沢ベースメントバーにてDONUTとRock isのイベント「Rock is LIVE5」を開催。トップは神戸のバンド がらくたロボット。クラッシュとジャムとフーが一気に押し寄せたようなバンド。メンバーは20代前半。客席の温度をぐんぐん上げてくれた。2番目は錯乱前戦。「ロックンロールで踊れない奴は今すぐ出て行け」と歌う平均年齢18歳の5人組。ロックンロールのアティチュードが爆発したステージングにはいつも圧倒される。hotspringはロックンロールの衝動をいいメロディに昇華させた楽曲が一番の武器だ。近年オリジナルメンバーが次々に抜けるという事態に。それを逆にバネにして活動をつづけている、そのパワーを体感するだけでも、ライブを見る価値はある。むしろ今が一番エネルギーに満ちているかもしれない。

10月13日(土)浅田信一 Grapefruit Moon

三軒茶屋グレープフルーツムーンでの浅田信一のコンセプトは「自分が住んでいる街でアットホームなライブを」。もうひとつのホーム・グラウンド、代々木ザーザズーでのライブとは違い、浅田信一と観客の物理的&心理的な距離がものすごく近い。今日もアコースティックギター1本で新曲を披露したり、出来かけの曲を歌ってみたり、とてもフランクな楽しい時間を提供。ザーザズーとグレープフルーツムーンの棲み分けはとてもいいアイディアだと思う。他のアーティストもこういうライブをやればいいのにと思うが、これが意外に難しい。アットホームと馴れ合いは違うからだ。つまりアコースティックギター1本でも完璧な2時間のショウができるというのが前提。浅田信一はそれができるから三茶のショウが特別なものになる。

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10月14日(日)ザ・コレクターズ SHIBUYA CLUB QUATTRO

コレクターズの渋谷クアトロ・マンスリーも今月で10回目。残すところあと2回。とはいえチケットは12月分までソールドアウト。いつもはクライマックスで盛り上がる「スィート・シンディ」を1曲目に投下するなど、意表をついた選曲に。途中、新曲「ひとりぼっちのアイラブユー」を初披露。本編最後は「20世紀が終わっても」を熱唱。今月もチャレンジングなセットリストで徹底的に攻めまくる。この攻めの姿勢は最近のコレクターズのアグレッシブな活動とも重なる。

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10月16日(火)女王蜂 中野サンプラザ

女王蜂のライブを見に中野サンプラザへ。女王蜂にとって初のホールツアーのファイナル。ライブハウスでのライブとは違って挑戦的なセットリストだった。ディスコティックな世界とアヴちゃんの情念の世界をうまい具合に配置し、最後はジュリ扇を振りつつ本編が終わるのだが、今回は、最後を情念の世界で包んで終わるというすごい展開に。もはや終盤はコンサートというよりも演劇を見ているようだった。これで終わっても最高にかっこよかったが、そこはショーマンシップに溢れた女王蜂だ。アンコールで1曲バラードを歌った後にディスコナンバーへ突入。客にジュリ扇を思い切り振らせて終了。自分たちがやりたいことをやりながら、客の欲求にもアジャストするショウだった。

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10月18日(木)フラワー・カンパニーズ 東京キネマ倶楽部

フラカンのフォークの爆発ライブ。アコースティック・アルバム『フォークの爆発 第1集〜29〜』のリリース・ツアー。フォーク・アレンジのフラカンの楽曲は新しい曲として生まれ変わったような新鮮さがある。企画アルバムではあるが、新作としての威力を有している。基本はそのアルバムを紹介するライブだが、実際は、フラカンの部屋に招待されたかのごとく、何でもありの無礼講ライブが展開された。これがめちゃくちゃ楽しかった。シリアスな曲も少なくないフラカンだが、このシリーズをやることでバランスをとっているのかもしれない。しかしフラカンのお客さんはなかなか手強い。バンドが面白い演出を仕掛けても思惑通りに乗ってはくれない。そのお客さんとステージの駆け引きも楽しかった。

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10月19日(金)爆弾ジョニーほか 新宿レッドクロス

爆弾ジョニーの週刊ライブを見にレッドクロスへ。今日は、おとぎ話との2マン。おとぎ話の真摯なライブを受けてなのか、爆弾ジョニーの得意技のひとつであるオモシロ演出を封印。次々に濃密な楽曲を披露していった。しかも繰り出される新曲はどれも秀逸。真摯にライブに向き合った結果、その楽曲たちが十二分に力を発揮していた。爆弾ジョニーは次の一歩をどこへ踏み出すのか、なかなかライブの着地点が定まらない。今は試行錯誤の過程だ。面白い演出をやるのなら米米CLUBやユニコーンくらいまでエンターテインメントとして極めてほしいし、真摯なライブをやるのなら、ロックンロール・バンドとして強靭な姿を見せてほしい。本来ならそのふたつを同居させる実力を持っているバンド。まだまだこれから面白くなるはずだ。

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10月25日(木)映画『ボヘミアン・ラプソディ』 20世紀FOX試写室

フォックスの試写室にて『ボヘミアン・ラプソディ』。QUEENが成功していくなかで孤独に苦悩するフレディ・マーキュリーを軸に描いた作品。物語の起伏は少ないし、第一、映画が始まって30分くらいでQUEENは成功してしまうので、サクセスストーリー的なカタルシスもない。なのに、クライマックスのライブ・エイドのシーンでは思わず涙がこみあげてきた。なぜか。20分に渡り鳴り響くQUEENの楽曲たちが「ロックンロールはフレディの孤独をひっくり返せる力を持っている」ということを証明するからだ。QUEENの物語を通して語られる「音楽の偉大さ、尊さ」に涙した。

10月27日(土)山﨑彩音、betcover!! 新宿レッドクロス

betcover!!を招いて山﨑彩音がリリースパーティをレッドクロスで行った。betcover!!も山﨑彩音も見るたびに違うアレンジを楽曲に加え楽しませてくれる。betcover!!にいたっては試行錯誤のレベルではなく高尚な遊びでもやっているかのような余裕すら漂っている。山﨑彩音の場合はメンヘラに溺れず、絶叫もせず、のたうち回らず、明るく振る舞うこともできない、彼女の奥底に封印された感情の波をサウンドに宿し放たれる。2人ともライブをやるたびに高みへと向かう。彼らに既製品のような型はなく、むしろ自分がつくった楽曲をアップデートすることに情熱を傾けている。ちなみに、これを書いている11月の時点で、山﨑彩音はすでに創造的な試行錯誤の段階に入っている。一体どこまで昇りつめるのだろう?

10月31日(水)ポール・マッカートニー 東京ドーム

ポール・マッカートニーの東京ドーム公演。今回のショウはアンコール込みぴったり2時間半のセットリスト。「フレッシュンアップ」というタイトル通り、照明は洗練され、ホーンセクションが加入したことで直近のツアーとは楽曲の印象もずいぶん違った。そのホーンセクションが客席から登場する演出もよかった。ポールが歌い始めた瞬間、ビートルズの赤盤を聴いた14才のときのあの興奮が蘇ってくる。ここ数年もう何回も見ているポールのライブなのに、1曲目の「ハードデイズ・ナイト」で涙が出てきた。ポールはいつだって14才のあの日の興奮を蘇らせる。しかしここはあの日の子供部屋とは違う。その興奮をポール・マッカートニー本人と同じ空間で共有しているのだ。毎年来るからありがたみがない? そう思うなら行かなきゃいい。ぼくは行く。何度でも見る。ぼくにとってポールのライブ以上に楽しいことなんてひとつもないからだ。

(森内淳/DONUT)

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