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2018/3/7

森内淳の2018年1月 ライブ日記(後編)

1月21日(日)THE COLLECTORS 渋谷クラブクアトロ

コレクターズのクアトロマンスリー第1弾。クアトロマンスリーとはコレクターズのファンにはお馴染みの企画だ。年によって違うが、3ヶ月から半年にかけて毎月渋谷クアトロでライブをやるというライブ・シリーズだ。ファンにはとても人気が高い。なぜなら、普段のツアーではやらないようなマニアックな楽曲を披露するという暗黙の縛りがあるからだ。もちろん毎月セットリストも変わる。格闘技で言うと、「試練の7番勝負」みたいなものだ。それを今年は12ヶ月やる。つまりは「リアル」クアトロマンスリーだ。コレクターズは2016年春の日比谷野音公演から30周年イヤーをスタート。野音は即完。2017年3月には初めて武道館公演を行い、あと7枚でソールドアウトという盛況ぶり。続いての全国ロングツアーも各地盛況で、ファイナルの中野サンプラザのチケットは即完だった。30周年イヤーを無事に終えたコレクターズが打ち出したのがクアトロマンスリーという試練の12番勝負だった。ゆるやかな活動に戻すのが定石だが、彼らはさらにハードルを上げ、攻めていくことを選んだのだ。その最初のクアトロマンスリーがこの日、開催された。本編最後は彼らお得意のノリのいいビートナンバーではなく、「深海魚」という壮大なロック・ナンバーを披露した。意表をついたこの選曲がクアトロマンスリーへ向かう姿勢をあらわしていた。12ヶ月間、「攻めるコレクターズ」が堪能できそうだ。ちなみに一般発売された3月までのチケットは完売しているのでご注意を。

 

1月23日(火)Kitty,Daisy & Lewis 渋谷クラブクアトロ

以前、DONUT編集部でつくった「SHAKE」の表紙は甲本ヒロトがKitty,Daisy & Lewisのサードアルバムを手に持った写真だった。彼らはロンドン出身の3兄弟。父はマスタリング・エンジニアで母は元レインコーツのメンバー。いわゆる音楽一家だ。ロックンロール、ロカビリー、ジャズ、ブルースを、曲ごとに楽器を変え、ボーカルを変え、披露する。サウンドスタイルはクラシックだが彼らのたたずまい、演奏、歌はクールでファッショナブル。そして何よりもポップ。たぶんこれが90年代だったら、流行を先取りしたようなワケのわからない業界人やらミーハーな人たちで会場はいっぱいになっただろう。ところが、今、会場はそういった華やかさよりも通なロックファンの集まりのようになった。まぁそれはそれでものすごくいい雰囲気の盛り上がりでよかったのだが、音楽がカルチャーの最先端として大手を振っていた頃がちょっと懐かしくなった。セットリストは最新アルバム『Superscope』を中心に構成。90分に渡り、キラキラしたロックンロールを堪能した。「The Game Is On」「Black Van」がかっこよかった。ちなみに『Superscope』は2017年リリースされたアルバムのなかで個人的なナンバーワンの作品だ。

 

1月24日(水)WORDS TOWN WEDNESDAY 神田テラステーブル

毎月恒例のフリーイベント。MCやDJをサポートする役割をやらせてもらった。そもそも神田には共立講堂というポップスとロックの聖地があった。はっぴいえんど、RCサクセション、荒井由実、古井戸……70年代に活躍した日本のアーティストのほとんどがこの舞台に上がった。いろんな事情で共立講堂が大学以外のコンサートに貸し出されなくなったあと、渋谷公会堂がその地位を譲り受けた。2020年に、この神田にライブホールができる。神田を新たな音楽の聖地にしたいという思いから、このイベントが立ち上がった。場所は神田テラステーブル。小洒落たフードコートだ。ここにシンガーソングライターが集結して、フリーライブを行うという趣向だ。3月から場所を移すため、この日はテラステーブルでの最終回となった。最後ということで、ザ・ビートルズの最後のセッション「ルーフトップ・セッション」の楽曲をアルバム『LET IT BE』からかけた。ぼくが手伝ったのはほんの数ヶ月だったけれど、山﨑彩音、エルモア・スコッティーズ、ハイエナカーなど、素敵な出会いがあった。彼らはRock isにも登場してくれた。この日はトリでRock is LIVEにも登場した咲絵の新しいバンド、イエローキャラバンが演奏した。

 

1月26日(金)Droog 渋谷チェルシーホテル

文句なしに素晴らしいライブだった。会場は満員ではなかったけれど、Droogは1曲目から最後まで全力でパフォーマンスした。最近の彼らの楽曲は90年代の日本のロックのDroog的解釈だ。それを見事にステージで体現していた。そこへ初期の激しい楽曲が絡んでいき、ライブに厚みをもたらしていた。もしも90年代だったら、大ブレイクしていただろう。つまりは、当時のバンドのクオリティに負けてないということだ。Droogがブレイク前というのは大問題だ。何が問題かというと、彼らの魅力を伝えきれていないメディアであるぼくたちだ大問題だ。この日のライブが心に火を付けた。頑張らせていただきます。

 

1月27日(土)myeahns(マヤーンズ)渋谷MilkyWay

マヤーンズのワンマンライブ。マヤーンズはフォーピースのバンドからスタートして、3人になって、5人になった。それぞれの時代でワンマンライブをやっている。そのなかでも一番盛り上がったのではないか。とくにライブ終盤のキレッキレの演奏はオーディエンスを圧倒した。ボーカル・ギターの逸見亮太が投げたマイクを自分でキャッチして歌うパフォーマンスは相変わらず様になっている。欲を言えば、このモードに中盤から突入してほしかったが、それは次のワンマンの課題ということで。ちなみにこの日は、21歳以下はドリンク代のみで入場可。この試みが当たって、会場は満員になった。今、ライブハウス・シーンではブレイク前のロックンロール・バンドが台頭している。その勢いは止まらない。1月のライブを振り返っても、hotspring、Droog、THE BOHEMIANS、THE PINBALLS、DOUBLE SIZE BEDROOMなどなど、いいロックンロール・バンドのライブをたくさん見た。そういう意味ではとてもいい試みだったと思う。

 

1月31日(水)ザ・クロマニヨンズ 新木場 STUDIO COAST

クロマニヨンズは普遍的ロック・バンドの王道をさらに究めようとしているのではないだろうか。ただただ勢いだけで圧倒するようなライブ・バンドから確実に変容していっている。例えば、ザ・クラッシュがどんどん変容し、パンクではなくロックのど真ん中に着地したように、クロマニヨンズもそういう場所で音を鳴らしている。エイトビートではない楽曲も、クロマニヨンズのロックンロールとして力強く鳴り響き、揺るぎない骨太なロック感をステージに現出させている。逆に、エイトビートの曲は、勢いや初期衝動を通り越して、普遍的なロックとしての存在感を示している。サウンドのダイナミズムやパワー感がどんどん高まっている。キャリアの長いミュージシャンがそういう場所に目指しているのを見ると、ロックの面白さ、深さは計り知れないな、と思ってしまう。とくに最新作にはエイトビート以外の曲もたくさん入っているので、その変化をわかりやすく捉えることができる。今回のツアーは面白い。(森内淳/DONUT)

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