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2018/6/4

森内淳の2018年4月 ライブ日記

4月はあまりライブハウスに行けなかった。そのかわりと言ってはなんだが、ARABAKI ROCK FEST.にお邪魔した。ARABAKIは年々内容が濃くなっているような気がする。人気アーティストだけではなくまだ無名のミュージシャンも小さなステージで歌っていたりもする。東京のライブハウスで滅多に見ることができないアーティストと出会うのもフェスの醍醐味だ。4月に印象に残ったライブはザ・クロマニヨンズのライブだ。4月のライブのなかでベスト・パフォーマンスだった。くわしいレビューはこの日記とは別に長いテキストを書いたので、そちらを読んでほしい。

 

4月1日(日)ドミコ 渋谷WWW

ラジオパーソナリティー中村貴子が主催のイベント。彼女の誠実な仕事のおかげで彼女を慕うリスナーとミュージシャンがたくさんいる。そのリスナーとミュージシャンがライブでつながるのがこのイベント。the pillows、和田唱、髭の3組が登場し、ラジオを意識したセットリストと演奏を展開してくれた。そのくわしい模様はライブレポートを書いたのでそちらを読んでいただきたいので、ここではくわしくは書かない。

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4月2日(月)カサブランカ 新宿レッドクロス

カサブランカはyoko(noodles)、山中さわお(the pillows)、楠部真也(Radio Caroline)による3ピース・バンド。マイペースなバンドなので頻繁にライブをやっているわけではないが、そこはさすがのベテラン集団、デビューからわずか1年半で飛躍的にライブの完成度が上がった。オルタナティブ・バンドとしての風格も出てきた。加えてこの日はMCもかなりやばいことになっていた。話がいろんなところへ飛んでいくyokoと、それに対応しようと必死になる山中と楠部の掛け合いはもはやひとつの芸の域に達していて、難解なアート作品でも見ているかのようだった。たまにしか見られないので、見られる機会があれば、ぜひ見てほしい。最近、オルタナティブにこだわる若いバンドも多い。THIS IS JAPANは精力的にオルタナ・イベントを仕掛けている。ベテランと新人の橋渡しをして、オルタナをテーマにしたイベントをやったら面白いだろうな、と思いながらライブを見ていた。というかカサブランカも新人か。

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4月3日(火)ニトロデイほか 新宿MARZ

(4月3日の時点で)全員10代のニトロデイ。楽曲のスタイルは伝統的なグランジのスタイルとJポップのミクスチャーだが、彼らの佇まい、曲の佇まいは2018年の何事にもクールな若者像を反映している。たとえば90年代の若者に蔓延していた気だるさをPUFFYがポップ・ミュージックに変えたようなことをニトロデイはやっているように思う。クールさとオルタナティブとグランジ、それにJポップのメロディ。こうくると、アニメのエンディングテーマのような既視感のある楽曲ができそうだが、ニトロデイの場合、それらをミックスしながら、吐き出したサウンドにはJポップっぽさはないという、とても新しいロックを生み出している。ミクスチャーとボーダレスの結果、新しいスタイルを作っていくのがロックンロールの奥義だ。それをニトロデイは自然体で実践しているように思う。つまりこれが2018年の日本のロックンロールということだろう。

 

4月8日(日)ザ・ニートビーツ写真展 TWISTIN’ SHACK

世田谷通り沿いにオープンしたギャラリー「TWISTIN’ SHACK」へニートビーツの写真展を見に行く。Mr.PANも在廊していて、場内はえらい賑わいだった。展示してある写真は柴田恵理氏が撮影したもの。ニートビーツを長年追いかけてきたこともあり、いい意味で被写体に遠慮していないというか、柴田氏とバンドのちょうどいい距離感が臨場感のある写真を生み出していた。彼女はクロマニヨンズの写真も撮っているが、こんな感じでクロマニヨンズにもぐいぐい踏み込んでいってほしい。TWISTIN’ SHACKでは将来的にこういう企画をどんどんやっていくという。みんなが集まる場がリアルからバーチャルへと移行するなか、こういう「現実の場」ができたということは、とても貴重だと思う。

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4月8日(日)ザ・クロマニヨンズ オリンパスホール八王子

TWISTIN’ SHACKを出て、世田谷線で下高井戸まで。下高井戸から府中を経由して京王八王子へ。そこから徒歩でオリンパスホール八王子へ向かった。今日はクロマニヨンズのツアーセミファイナルが行われる。クロマニヨンズはツアー後半にホール公演を行う。ホール公演はステージが広いので演出もライブハウスのときよりも凝っている。この日も後半に行くにつれ、照明が派手になって、しっかりしたエンタメ・ショウが現出していた。クロマニヨンズはロックの衝動云々といわれがちだが(それは正しいんだけど)、楽曲はポップだし、何よりも4人の指向性もポップだ。雑にいうと、ブルースとロックンロールとビートルズが常に楽曲や演奏のなかに同居している。モッシュもダイブもないホール・コンサートからは彼らのポップがよく見える。くわしくはライブレビューを書いたので、そちらを読んでほしい。

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4月15日(日)ザ・コレクターズ SHIBUYA CLUB QUATTRO

コレクターズによる12ヵ月連続クアトロ・マンスリーの4月編。クアトロ・マンスリーでは何年も演奏していない曲を聴くことができる。毎月セットリストも大幅に入れ替わり、毎回違うショウを楽しめる。このステージをたった4週間で準備するコレクターズも大変だと思う。とくに新しく入ったリズム隊は曲を覚えるのにひと苦労だと思う。つまり、このシリーズはバンドにとって武道館公演に匹敵するくらい挑戦的な企画なのだ。それはオーディエンスもわかっていて、チケットは一般発売済みの6月分まで完売している。4月編は「JOIN TOGETHER」からスタート。この曲は藤井フミヤのアルバム『F’s KITCHEN』のためにかかれたものだ。藤井フミヤの武道館イベントに出演したとき、コレクターズはこの曲を演奏している。ステージで披露するのはそれ以来かもしれない。ほかには「ご機嫌いかが?おしゃべりオウム君」「おねがいホーキング博士」「あの娘は電気磁石 」などがリスト入り。いずれも直近のツアーではリストから漏れていた曲たちだ。本編最後にはアルバム『HERE TODAY』から「嘆きのロミオ」を演奏。6分にも及ぶ大作をドラマチックにプレイ。大作の演奏で締めくくられた本編に、観客の熱狂もピークに達した。

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4月20日(金)爆弾ジョニー TSUTAYA O-EAST

ツアーの追加公演として発表されたのが今回のワンマンライブ。タイトルが「うんこ」。爆弾ジョニーらしいユーモアが盛り込まれたタイトルだ。ライブの方も、予測不能なパフォーマンスが満載の実に自由な内容だった。セットリストがあってないような、起承転結はあるんだけど、ないように感じさせるようなステージング。ただひたすらロックンロールが暴走する2時間。爆弾ジョニーの楽曲はどれもいい曲ばかりなので、もっと地に足をつけて楽曲のよさを伝えてほしいという思いもありつつ、この暴走感がなくなったらつまらなくなるだろうなという考えも巡る。ライブ中、その狭間で自分自身の評価が行ったり来たりしていた。爆発力を維持しながら楽曲のよさを伝えていく、そんなウルトラCを繰り出せれば、バンドはもっともっと飛躍すると思うのだが、そんな都合のいい着地点は果たしてあるのだろうか。

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4月22日(日)エルモア・スコッティーズほか 横浜BBストリート

エルモア・スコッティーズのドラマー兼ボーカリスト、岩方ロクローの19歳最後の日。彼は横浜を代表するドラマーで、いろんなバンドやミュージシャンのセッションに引っ張り凧だ。5月なんかライブが10日間連続で入っていたりする。その岩方ロクローが好きなバンドを集めたイベントが「ティッシュの日2」。なかでも横須賀のバンド・花魁少年と湘南のバンド・YOIMACHI THREE(メンバーが4人になったのでバンド名を変えるそうだ)のライブがよかった。トリにはエルモア・スコッティーズが登場。見るたびに演奏が力強く変わっていくのがわかる。10代の成長は著しい。日本語を大事にした歌メロ、クラシックロック、オルタナが混在した楽曲がとても気持ちいい。新しくもあり普遍性も備わっている。それがエルモア・スコッティーズだ。

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4月28日(土)・29日(日)ARABAKI ROCK FEST.18

27日の夜に仙台入り。翌28日の朝からARABAKI ROCK FEST.へ。普段からライブハウスに行き倒しているので、日本のアーティストが集まるフェスを見るには、それなりの動機というか自分自身の物語が必要になってくる。ライブレビューでも書いたが、ARABAKIは人気アーティストが集結したというだけでなく、日本のロックの深部やヒストリーを意識した企画やセッションを惜しげもなく注ぎ込んでくる。今年も池畑潤二のBIG BEAT CARNIVALや村越弘明のスライダーズの楽曲の披露など、魅力的なステージが満載だった。来年もぜひ参加したいと思う。くわしくはライブレビューを読んでほしい。

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(森内淳/DONUT)

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