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2018/7/28

森内淳の2018年6月 ライブ日記

6月も11本とちょいと少なめだった。ライブハウスでライブを見ている瞬間が至福であることにかわりはないのだが、いい加減、年寄りなので、そこは身体と相談しながらの参加になる。6月はいきなり初っ端から豪華ラインナップのイベントを見ることができた。まだまだ無名だが、ぼくのなかでは奇跡のブッキングだ。5年後に「見に行けばよかった」という人が続出すれば面白い。そういう未来への可能性を期待しながら、ライブハウスに行くのもいいものだ。

 

6月1日(金)  横浜BBストリー エルモア・スコッティーズ、Teenager Kick Ass、Ring Ring Lonely Rolls、 Mr.Seaside

横浜BBストリートへ岩方ロクロー(エルモア・スコッティーズ、ニトロデイ)主催イベントを見に。出演バンドはエルモア・スコッティーズ、Teenager Kick Ass、Ring Ring Lonely Rolls、 Mr.Seasideの4バンド。 どのバンドもライブハウス・シーンを賑わしている新進気鋭のバンドだ。揺るぎない意思でロックンロールを鳴らすTeenager Kick Ass、1967年のビートルズ・サウンドを取り入れたRing Ring Lonely Rolls、爆音でグランジとオルタナを鳴らすMr.Seasid、そして日本語ロックの普遍性を照らすエルモア・スコッティーズ。すべてのバンドが高い完成度と未来感を表現していた。4バンドともブレイクする可能性を十分に秘めている。5年後くらいに同じメンツででかい会場でイベントができたら最高だろうな、と思う。

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6月7日(木)SHIBUYA CLUB QUATTRO 髭、夜の本気ダンス

髭と夜の本気ダンスの2マンライブ。バンド同士の、そしてファンとの濃密な愛に溢れた2時間半。ここ1年くらいの髭のアグレッシブなライブパフォーマンスは、バンドサウンドが塊になって突進してくるような印象がある。まさに前作『すげーすげー』を体現したようなグルーブだ。髭は9月26日に新作『STRAWBERRY ANNIVERSARY』をリリース。ストロベリーは「いちご」で15周年の1と5にかかっているのだろうか。たぶんそうだと思う。

 

6月8日(金)ZeppTokyo the pillows

the pillowsのZeppTokyo公演は『RUNNERS HIGH』『HAPPY BIVOUAC』の再現ライブ。暗闇と向き合った前2作『Please Mr.Lostman』と『LITTLE BUSTERS』が評価されたのをきっかけに、バンドはブレイクのきっかけをつかんだ。それに伴い『RUNNERS HIGH』『HAPPY BIVOUAC』は闇から光へ向かうリリックに変化。音楽性もオルタナティブミュージックの影響でどんどん開花し、ピロウズはポジティブで揺るぎない自信に満ちた楽曲を生み出した。その楽曲たちが次々に演奏され、ライブは多幸感溢れる空間に彩られた。ピロウズは創造性が芽吹く時期の眩しいライブをやったあと、アンコールで今まであまり見られなかったタイプの新曲を披露。過去と現在の才能を同居させることで、過去作と未来のピロウズとをつなげた。

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6月9日(土)マイナビBLITZ赤坂 SA

最近の若いバンドはステージの上でよく現状を嘆く。なかなかライブハウスが埋まらない現状や将来の不安について嘆く。CDが売れない時代だからしょうがないのかもしれないし、その嘆きはバンドを動かすための推進力にもなっているのかもしれない。しかし見に来る方は、それこそ日頃のストレスをライブ会場に置きに来ているわけだから、戸惑うことも多々ある。オーディエンスはどこかで非日常を求めているのだ。SAのタイセイもMCで嘆くことがある。しかし50を過ぎたタイセイたちの場合、体力的な限界という要素が大きい。にもかかわらず、タイセイは、SAは、さっきまで「いつまでやれるかわからない」といっていたとは思えないほどの力技でライブ会場をねじ伏せる。弱音も底力を見せるための前振りのように思えてしまうほどだ。本当はきつさもあると思うのだが、パフォーマンス中は一切それを感じさせない。それどころかやたらとポジティブだ。曲が鳴った瞬間、違う世界が訪れる。エンターテインメントと軋む身体のせめぎあい。それもまたSAのリアリティだ。

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6月12日(火)ZeppDIVERCITY STRAIGHTENER

STRAIGHTENERを見にお台場のZeppDivercityへ。最新作『Future Soundtrack』のツアー初日とあって独特な緊張感が漂うなか、新曲を次々に披露。『Future Soundtrack』は歌を前面に押し出した作品だが、ライブでは演奏と歌とが密接に響き合い、さらに美しい照明効果も手伝って、熱狂とクールネスの間に着地するストレイテナーの世界観を創り出していた。新作のジャケットアートは多面性を表しているそうだけど、まさにライブもストレイテナーの多面性を示すものだった。ライブ終演後、2019年1月19日(土)に幕張 イベントホールでワンマンライブを開催することが発表された。

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6月15日(金)HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2 秋山黄色ほか

新幹線に乗り、宇都宮まで秋山黄色のライブを見に行った。秋山黄色は男性ソロアーティスト22歳。ライブなどはやらないで、YouTubeやsoundcloudで50曲以上の楽曲をひたすら発表していたところを、現在のスタッフが見つけ、コンタクトしたという。連絡先も何もまったく情報がなかったというから、ほとんど自己のなかで完結した音楽制作だったのだろう。しかし彼が放つ楽曲はメジャー感があり、ボーカルも説得力がある。歌詞は内省的ではあるが、ロック・ミュージックとしてはベクトルが外に向いている。業界内でもけっこう話題になっていて、早い内にブレイクすると思う。今日はバンドスタイルではなく、アコースティックライブ。短い時間ではあったが、秋山黄色のボーカルの艶を堪能した。

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6月17日(日)SHIBUYA CLUB QUATTRO THE COLLECTORS

THE COLLECTORSのクアトロマンスリー・シリーズ6月編。毎月渋谷クアトロでやるライブシリーズも今回で6回目。相変わらずの満員ソールドアウト。毎回創意工夫されたセットリストで楽しませてくれるコレクターズだが、今回は「恋のしわざ」〜「ロマンチックプラネット」の流れと「SUMMER OF LOVE」がよかった。とくに「SUMMER OF LOVE」は、武道館前に加入したcoziの力強いロックンロール・ドラムによりロックテイストを宿していた。コレクターズは時代に応じたモダンなロックを取り入れてきたが、昨今のコレクターズは軸足をTHE WHOやTHE KINKSという自らのルーツに置いている。バンドが目指すスタイルがあらゆるタイプの楽曲にもきっちり焼き付けられている。「スペースパイロット」も大きなロック・アンセムとして響いていた。今回はボーカル泣かせの楽曲が次々に出てくる「試練のセットリスト」。それを加藤ひさしは見事に歌いきった。そして7月のマンスリーライブでは、現在レコーディング中のニューアルバムから新曲を披露することを約束。このシリーズは12月までつづく。

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6月17日(日)RUBY ROOM マヤーンズ

コレクターズのライブ終了後に渋谷RUBY ROOMでマヤーンズのワンマンライブ。こちらもソールドアウトだ。3ピースから5人編成になったあと、今ひとつ地に足がついていない印象があった。5人のサウンドをどうまとめていいのかわからないような、未だ迷っている感じだった。とくに前回のワンマンはそういう印象で終わってしまった。あれから数ヶ月。今回のワンマンのライブパフォーマンスは見違えるほどの進歩をとげていた。徐々にエンジンをかけていくのではなく、最初からロックンロール・ナンバーを叩き込み、終始フル回転で駆け抜けた。日頃からロックンロール・シーンを牽引していきたいといっている逸見亮太の宣戦布告のようなライブだった。5人のギアもしっかり噛み合い、これからのマヤーンズに期待できるような内容だった。

 

6月21日(木)下北沢SHELTER hotspring

hotspringのワンマンライブを下北沢シェルターに見に行った。マヤーンズ同様、hotspringも期待のロックンロール・バンドだ。ところがツアー中にベースの伊藤コウスケ脱退というニュースが飛び込んできた。折しも『hotspring』というバンド名を冠したアルバムをリリースしたばかりだった。この難局に急きょサポートメンバーとしてツアーに参加したのが本棚のモヨコのベーシスト長島アキトだ。hotspringはロックンロールの激しさを前面に押し出したバンドだが、実はイノクチタカヒロの書く楽曲はメロディアスでリリックのセンスもいい。ロックンロールの焦燥感とは逆の性格を持っている。そういう部分が長島アキトの勢いだけではない、テクニカルなベースによって引き出された。始まる前はどうなることやらと不安しかなかったが、今日はいつもと違うhotspringの光景を楽しむことができた。

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6月23日(土)下北沢CLUB Que GOING UNDER GROUND

GOING UNDER GROUNDのライブを見に下北沢まで。GOING UNDER GROUNDは20周年ということで過去アルバムの再録やビルボードでのライブ、地元・桶川でのホールライブなどなど、いろんな企画を投下している。そんななか、今回は原点回帰のQue公演ということになった。ステージの上から松本素生は「チケットを売りすぎた」といっていたが、まさに立錐の余地もないというのはこのことだ。そんななか、GOING UNDER GROUNDは勢いに頼らない、歌とメロディをフラットに聴かせる曲を中心に披露。かねてから「今、現在の新しいGOING UNDER GROUNDを見せたい」と発言していたが、まさに定番曲を優先するよりもライブ全体の世界観と今の気分を大事にしたステージになった。客席との距離の近さもあって、2時間に渡って、オーディエンスとの間に濃密な熱を生み出していた。この熱を少しずつ繋いでいって、その先に再び武道館のステージがあったら最高だろうな、と思いながら見ていた。

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6月23日(土) 下北沢DaisyBar 花魁少年ほか

GOINGのライブが終わって、すぐにDaisyBarに移動。花魁少年のライブを見た。花魁少年は20歳の3ピースバンド。全員女子大生。リリックは孤独を照らし、サウンドはヘヴィ。楽曲によって音楽性の振れ幅が大きい。しかしマヤのねちっこい特徴あるボーカルが世界観を作っているので、散漫な印象はない。今回は「ドロップのために/サイケデリックサンシャインアンドムーンライト」のリリース記念イベント。先月の「鬼ヶ島/ファンファーレを頂戴」リリース記念イベントにつづく二度目のリリイベ。にもかかわらず会場は満員だった。成長著しいバンドの勢いが動員にもだんだんと還元されてきている。ボーカルのマヤは近々ONE SONGに登場するのでお楽しみに。

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(森内淳/DONUT)

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