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森内淳の2018年3月 ライブ日記(後編)
3月22日(木)ニトロデイ 他 下北沢ERA
高校生主催のイベントへ。お客さんも高校生が中心。17時開演という平日のライブハウスでは考えられない時間割でスタート。ぼくは取材の荷物を置きに一旦帰宅したので、途中から参加。この日のブッキングはひとりの高校生の趣味で選んだバンドばかり。それがイコール自分の趣味とはいかないのはしょうがない。今日出演したバンドで個人的に惹かれたのはトリのニトロデイだ。楽曲を作っている小室ぺいはとくにグランジにどっぷりというわけではないらしいが、2018年においてニルヴァーナのアティチュードを体現しているバンドだといっていい。ベースの松島早紀とギターのやぎひろみの佇まいがとにかくクールでかっこいい。このライブの時点では全員が10代というのも驚きだ。
3月23日(金)がらくたロボット 他 下北沢 LIVEHOLIC
がらくたロボットを下北沢のライブホリックで見た。がらくたロボットは神戸在住のバンド。彼らのライブを見るのは今回で2度目だ。JAMやTHE CLASHなどの70年代終わり〜80年代初期のソリッドなロックンロールを体現しているバンドだ。とはいえ、3人ともまだ20代前半。当然、リアルタイマーではない。リアルタイマーではないんだけど、リアルタイマーのぼくが唸ってしまうサウンドを表現している。ニトロデイにしてもディスジャパにしてもがらくたロボットにしても錯乱前戦にしても不器用なくらい好きな音楽と向き合っている。4つ打ちもいいけれど、そうではないロック・シーンがまた蠢き始めた。
3月24日(土)ナツノムジナ 他 新代田FEVER
真摯に音楽に向き合うといえば、ナツノムジナもまたそういうバンドのひとつだ。深みのある歌とメロディに轟音爆裂サウンドがからむシューゲイザーなライブと高い演奏力でめきめきと頭角を現しているバンドだ。彼らのライブパフォーマンスに対する評価は高く、この日も、新代田FEVERがほぼ満員になるくらいのお客さんがやってきていた。彼らの作品は繊細さが目立つところもあるだけに、レコードを聴く気分でライブハウスに出かけると、腰を抜かしてしまう。ぼくも最初に彼らのライブを見たときに、レコードにはない衝撃的なパフォーマンスにひっくり返ってしまった。それはこの日の対バンにもいえることで、なぜかシューゲイザー系のバンドはスタジオ盤をきれいにつくりすぎるところがあるようだ。それがトレンドなのかもしれないが、ライブにもっと近づけた方が面白いようにも思う。
3月27日(火)映画『SUKITA』映美学校試写室
ライブではないが、今日は、写真家・鋤田正義氏のドキュメンタリー映画『SUKITA』の試写を見た。主役の鋤田氏の物腰が一番柔らかく、言葉も態度も謙虚なところが妙に印象に残った。何事に対しても「勉強になった」という鋤田氏の謙虚さが印象的だった。このドキュメンタリーの面白さは、巨匠の言葉が乱射される啓蒙書的な作品ではないところにある。映画のなかで一番強い言葉が「時を写す」。ただ被写体を写すのではなく、時間を写す。時代を写す。ところが、その写真たちは古臭くならずに、普遍性を獲得しているという不思議。もしかしたら今この瞬間に寄り添い、開き直った方が、かえって普遍性を獲得できるのかもしれない。それから鋤田氏のフレームを通して見えてくるデヴィッド・ボウイの姿は斬新だった。ボウイのドキュメンタリーを見るのと同じくらいにボウイに触れられた気がした。上映時間が115分。最初は長いんじゃないかと思ったが、あっという間だった。
3月28日(水) ベランパレード 他 六本木Varit
六本木へ宮崎在住のバンド、ベランパレードのライブを見に行った。なかなか時間とタイミングが合わずにライブをずっと見られなかった。久しぶりの歌も演奏も衣装も、より洗練されていた。はみ出すところはしっかりはみ出し、洗練するところは洗練する。ベランパレードの両面性を消化しながらライブをやっていたように思う。メロディもいいし歌詞もいい(ぼくが歌詞もいいと書くときには、歌詞が軽音でもメンヘラでもないパターンを指す)。東京でガンガン活動すればあっという間に人気が出そうだが、最近のバンドは地方在住がおおいので、歯がゆい思いをしながら、ライブを見るこが多々あるが、今日もそんな感じだった。だけどそれは彼らの人生なのだから、とやかくいう筋合いはない。そろそろ新しい音源が聴きたいところだ。
3月29日(木)エルモア・スコッティーズ 他下北沢BASEMENT BAR
横浜のバンド、エルモア・スコッティーズを下北沢ベースメントバーにて。今のところほぼ無名の新人バンドで個人的イチオシがエルモア・スコッティーズだ。前述したニトロデイのドラム岩方ロクローが率いるスリーピース・バンドだ。作詞・作曲とボーカルは岩方ロクローが担当。ただし3分の1くらいの比率でベースの大森遥のボーカル曲がある。バンドは、この2人の「歌」によって成り立っている。どっしりとした歌のメロディにたしかなリズムが刻まれる。そこへ功刀源(くぬぎみなと)のオールド・ロック・テイストのギターが途中で滑り込んでくる。ロックの普遍性とまだまだこれから伸びていく可能性を持ったバンドだ。3人とも今年ようやく20歳を迎えるヤング・パーソンズ。めちゃくちゃ期待している。今日の登場バンドで気になったのはMr.Seaside。
オルタナとロックンロールのスピード感が気持ちいいバンドだ。
3月31日(土)CHAI 他 東京キネマ倶楽部
春のCHAIまつりを見にキネマ倶楽部へ。相変わらずの隙のない、緻密に計算された完璧なショウを展開。しかしそれがちっともいやらしく見えないところがCHAIの魅力だ。ただなんとなく好きなことをやっています的なオーラに包まれてしまう不思議さがCHAIをマニアックな世界からポピュラリティの獲得へと導いている。今日のハイライトは新曲「アイム・ミー」。めくるめくグルーヴが場内を支配するなか、演奏されたポップ・ダンス・ナンバーは、90年代のPUFFYの楽曲のように、お茶の間へも飛んでいける力を持っている。その最初の狼煙のような気がした。次は恵比寿リキッドでワンマン公演。が、しかし、すでにソールドアウト。追加公演を渋谷クアトロでやるらしい。
(森内淳/DONUT)